■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50
BBSメイル・ゲーム…プレイボード
- 2 :4:2009/09/22(火) 00:01:30 ID:4UdTFg560
- しょっぱなからなんですが、あと2つか3つの文章をUPします(もう少し後で)。
そこからリアクションの締め切りとなります。
承前その1
-------------------------------------------------------------------------------------------
そろそろ夏も終わりという頃のある昼下がり。テルヴェルの主教座がおかれた聖ジベリ教会の一室
で、突如聖都より訪れた異端審問官を前に助祭でしかないジフト
ラオスは緊張を隠せないでいた。心の中では、この役回りを押しつけた司教補にむかって不満や嫌味
をたたきつけていたが、表面上は穏やかな雰囲気を保っていた。
「エディス殿、聖都よりこのような田舎の……」
「ああ、そのような心のこもっていない言葉で、あなたの不安を押し隠すことはない。何よりここに
いるのは1日、あるいは知りたい情報が手に入ればすぐにでも立
ち去るつもりなのだから」
エディスと呼ばれた女性は、口早にジフトラオスの言葉を遮り、部屋に通された時の姿のまま周囲
を探るように視線を走らせる。ジフトラオスは一瞬むっときたが、
すぐにエディスのあまりにも警戒ぶりに疑念と別の種類の不安が心を揺さぶり始め、どのような言葉
をかければよいのか、そう思い悩み、知らず知らずのうちにのど
を鳴らしてしまう。
- 3 :4:2009/09/22(火) 00:02:56 ID:4UdTFg560
- >>2
の続き。
「……あのぉ」
「あなたはベヘールという言葉に聞き覚えはありますか?あるいはシャディスでも構いません」
ジフトラオスは少しばかり記憶を探った後、
「ベヘールという言葉は耳にしたことはありませんが、シャディスの方なら北の高地と取引を持つ信
徒の者から耳にしたことがあります」
「それはどのようにですか?」
「商売上、ラステロニクの貧民街にも立ち寄るそうなのですが、そこで最近よく耳にするそうで、そ
れを口にする者の様子がおかしく、時に恍惚然としていたり、あるいはしつこく探るような視線を人に向けたりして気味が悪い、と」
「ラステロニク……」ジフトラオスの話を聞くと、エディスは一言つぶやいて口に指を当て、なにや
ら考え始めた。ジフトラオスは後ろに控える側仕えの助祭見習いたちと困惑した目線をかわしながらも、彼女の思考を妨げないように黙って音を立てないようじっとしていた。
しばらくそうして時が過ぎたあと、エディスは深く息を吐き、戸惑い怯えるジフトラオスの目をまっ
すぐ見つめながら、声を落として語りかけた。
「どうやら由々しき事態が起きているようです。この街で高地に詳しい者、最近行き来した者たちか
らさらに話を聞かねばなりません」
「……一体何が起きているというのですか?」ジフトラオスは固い口調で尋ねた。
エディスは胸から下げた双斧のシンボルを握り締めながら応えた。
「新たな異端の発生です」
===========================================================================================
- 4 :4:2009/09/27(日) 23:26:30 ID:CdSIQnlQ0
- 承前その2
-------------------------------------------------------------------------------------------
さほど暑くもなかった夏が終わり、これから秋の色へさまざまなものが変ろうとするそんなある夜。こじんまりとしているが豪奢な造りをした部屋で二人の男がテーブルを挟んで酒を飲んでいた。
一方はゆったりとした衣を身にまとった、豊かな口髭と眉間に深いしわをもつ細身の老人で、もう一方は黒く手入れのゆきとどいていない頬ひげを生やした、まるでドワーフのように筋肉質の男をたてにつぶしたような体型をした壮年の男だ。
老人はゆったりと構え、深く椅子に腰掛けているが、若い方は、両手でカップを挟み込むように持ち、猫背気味になって相手をうかがうように見上げていた。だが、その目は鋭くぎらついている。
「クルーヴァ、今お前が出て行っても話がこじれるだけだぞ。先方が主張する権利は教会が認めたものであり、あの領地を継ぐのはあの娘だ」
「だからといって、オレはこんなチャンスを指をくわえて見てらんねぇ。フリスト卿、あんたには散々世話になったがオレは行くぜ。行って、オレのモノを取り返してやる!」
「クルーヴァ、お前がそう思う気持ちも分からないでもない。だが、お前が手勢と共にあの土地を襲い、奪い取って、自分のものだと宣言しても教会はおそらく認めんぞ」
クルーヴァと呼ばれた方はその時はじめて、表情を緩め、こずる気な笑いを顔に浮かべる。
「卿、オレだってそれは判っている。オレにいい考えがあるんだ、いやあるのです」
老人は眉をぴくりと動かし、それから促すように顔を動かしてみせた。クルーヴァはそれに対して一瞬表情を硬くしたが、少しぎこちない笑みを浮かべながら話を続けた。
「オレは手下どもと一緒にフリスに向かう。そらぁもう、遠くの町でもそのことが伝わるくらい目立ちながらね」
「するとどうなると思う、いや思います?これ幸いと峠一帯を押さえようとしたカヴァーフの奴らが黙っちゃいませんよ。奴らは慌てて準備もそろわないまま乗り込んでくるに違いありません!そんな相手をオレが蹴散らしてやれば、オレは領地の救い主になるって寸法でさ」
「……だが、それでも娘が領主であることは変らんぞ。まさか、お前……!」
フリストの鋭い視線を受けながら、クルーヴァはニヤリと笑う。
「なにせ、戦ですから。……少なくとも、兄貴は寂しくなくなるんじゃないんですか」
- 5 :4:2009/09/27(日) 23:27:40 ID:CdSIQnlQ0
- >>4
の続き。
しばらくの間、外の風が窓を揺らす音だけが部屋に鳴り響く。長い沈黙の後、フリストは口は開いた。
「……フリストラル家の当主夫妻がラステロニクの祭典に向かう道中、何者かに襲われて命を失ったという話を聞いてしばらく経つが、なぜ今になってそのような考えを思いついた。誰の入れ知恵だ?」
雇い主とはいえ、相手にそう断言されてクルーヴァは顔を強張らせが、すぐには言い返さず、深く息を吐いてから応えた。
「……おとついだったかな?酒場で飲んでいると、あまり見かけない奴が近づいてきて、オレにしたんですよ。旦那あんたは惜しい、私ならこうすると、てな感じでね」
「お前はそんな怪しげな奴の話に乗せられるのか?」
「卿、オレは何も傭兵団の団長なんぞになりたかったんじゃねえ、一国の主になりたかったんだ!そのためだったら、多少くらい危ない橋は通るし、今度の機会をのがしたらもう無え気がするんだ」
顔をフリストから逸らしながらクルーヴァはそう告げた。両手で抱えた杯が細かく震えているのを見つめながらフリストは静かに言った。
「……クルーヴァ、お前は今までいろいろわが家のために仕事をこなしてくれた。だから多少の無理ならお前に協力してやっても構わないと思っていた。だが、今回の件に関してシュレム家は一切関与しない。また、そのような行動を行った場合、お前を解雇することになる」
その言葉に顔をあげたクルーヴァに向かって、フリストは言葉を続けた。
「しかし、フリストラル家の現当主がビルトフォーフェの関与を要請しようとしている話も耳に入っている今、何も手を出さずにおくのは後々のためにならない、と私個人は思う」
「従って、お前が領主の地位を得た後に我が家と主従関係を結ぶというのなら、個人的にだが幾らかの資金と情報を提供しよう。どうする、クルーヴァ?」
話を聞き終えたクルーヴァは椅子から立ち上がり、杯をテーブルの上に置いた後、フリストの足元に膝をつき頭を垂れ、感謝の言葉を告げた。顔に深い笑みを浮かべながら。
===========================================================================================
- 6 :4:2009/09/28(月) 02:54:29 ID:JJHU0Dqk0
- 承前その3
-------------------------------------------------------------------------------------------
バーデンヴォルフの町は夏も終わりになり、南から時折涼しい風が吹くようになった。これももう
少し日が経つと冷たいものとなり、あっという間に冬になる。灰色の空を見上げながらディルクはふ
とそんなことを思い浮かべた。すると横から、
「……なにぼさっとしてるのよ!ほら、歩いてる人の邪魔でしょ!」
「歩いている人って、みんなそんな近くを通らないよ」
エリーカと自分の周りをはさむように立っている2人の護衛の姿を見、さらには自分たちから距離
をとって行き交う町の人々を見ながら応えると、
「あたしがいるじゃない!あなたが突っ立っているとあたしが進めないの。それともあたしの邪魔な
らしてもいいっていうの!?」
だったらこの手を離せばいいのに、そう思いはしたものの口には出さず、
「申し訳ございませんでした、お嬢様。では参りましょうか?」
僕の言葉にまだ釈然としないのか、ふんと鼻を鳴らした後、僕のつかんだ腕を引っ張るようにして
歩き始める。
「お嬢様……」
「その『お嬢様』ってのやめてって何度も言ってるでしょ!あたしの名前はそんなに難しくないんだ
から」
小さく聞こえないようにため息をひとつ吐いてから、
「エリーカ様、そんなに急がなくとも彼らは消えてなくなりませんよ。領主様との話し合いはまだ終
わらないようでしたから」
「ディルク、そんなのわからないじゃない。お父様は一旦決めてしまわれると、隼のように素早くす
べてのことを動かしてしまうんだから。こうしている間に彼らを帰してしまうかもしれないわ」
まずそれはないだろうなぁ、最近の周りの様子や領地内の出来事を多少なりとも知れる立場にいる
ので、今回の“彼ら”の訪問は領主様にとっても判断が難しいだろうと、僕は判断している。そして
、僕にもおそらく戦う機会が得られるのではないか、とも。
末席とはいえ、最近ようやく大人たちの会合や訓練に参加できるようになった自分だが、このとこ
ろ領地の内部や周囲でさまざまな問題が起きているそうだ。
- 7 :4:2009/09/28(月) 02:57:15 ID:JJHU0Dqk0
- >>6
の続き。
北部の山岳地帯にあるどこかの領主が行方不明だか、惨殺されただかでエリ川の上流に勢力を持つ
カヴァーフ家がやたら人や物を集めているとか。
南から迷い込んだらしい巨獣が領地からそれほど遠くない場所で居ついてしまっているとか。
沼地の北岸に住み着いている人々が、沼人たちの襲撃に悩まされ領主様の庇護を求めているだけで
なく、それに伴って領域を拡大しいっそ独自の王国を打ち立ててみてはと働きかけてくる人がちらほ
ら。
そんなことできるはずないのに。
「ふぅぅ……」
思わずため息が出てしまう。
「……なによ、そんなにあたしと一緒にいるのが嫌?」
「へ、ああ、いや、そういう訳ではなく……」
「だったら今のため息は何!?」
こちらを見ず、相変わらず腕を引っ張り前に進みながら、低く沈んだ声でそんなことを言われると
、思わず頭が混乱してしまう。左腕をつかんだ手がさっきより痛い。危ない、これは早く何とかしな
いと泣かれてしまう。幼い頃からの経験がそう告げる。
「いえ、自分の母から聞いた奥様の話をふと思い出してしまい、つい……」
自分としては、即興とはいえ、充分及第点の回答を導き出したつもりだったが、お嬢様は落第点だ
と思ったらしい。
- 8 :4:2009/09/28(月) 02:58:19 ID:JJHU0Dqk0
- >>6-7
の続き。
急に立ち止まると、腕をつかんでいない方の手で僕の頬を思いっきり殴りつけてきた。そして、僕
の目を睨みつけながら、
「あのね、ディルク。今あなたはあたしと一緒にいるの。それがどういうことだか解る?」
「もちろんです、お……エリーカ様」
「…………」
お嬢様の目の鋭さが一向に弱まらない。これは仕方ないかと腹をくくり、また変な噂が広まるだろ
うな、と諦めながら、彼女の両手を自分の両手で包み込んで胸元に寄せて、
「申し訳ありません、エリーカ様。あなたの騎士を仰せつかったこの自分が、あなたの母親とはいえ
他の女性のことを気にかけたなど。あなたの騎士として相応しくないことでした」
自分としてできる限り低くささやくような声で、もちろん周りに聞こえないようにだが、どこかの
叙事詩で使われていたセリフを言うと、
「ま、まぁいいのよ、ほら、仕方ないじゃない。私のお母様のことだし、あんな感じだし……」
など、視線をキョロキョロさせながら先よりは硬さの取れた声でつぶやいていた。まだ何か続けて
言ったようだが途中から聞こえなくなったが、どうやら機嫌は直ったようで、一応安堵する。それか
らは、あまり強く引っ張らず歩いてくれた。歩調もさっきよりは緩やかで助かる。
そうこうしている内にお嬢様が会いたがっていた者たちの姿が見えてくる。自分はあまりいい記憶
と結びつかないが、10年前の子供の頃の記憶にある姿とはかなり違っているように思えた。お嬢様
の方は嬉しそうに目を輝かせ、声を弾ませながら言った。
「わぁ、あれがウォーフォージドって言うのね」
===========================================================================================
36KB
続きを読む
掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50