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BBSメイル・ゲーム…プレイボード
- 4 :4:2009/09/27(日) 23:26:30 ID:CdSIQnlQ0
- 承前その2
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さほど暑くもなかった夏が終わり、これから秋の色へさまざまなものが変ろうとするそんなある夜。こじんまりとしているが豪奢な造りをした部屋で二人の男がテーブルを挟んで酒を飲んでいた。
一方はゆったりとした衣を身にまとった、豊かな口髭と眉間に深いしわをもつ細身の老人で、もう一方は黒く手入れのゆきとどいていない頬ひげを生やした、まるでドワーフのように筋肉質の男をたてにつぶしたような体型をした壮年の男だ。
老人はゆったりと構え、深く椅子に腰掛けているが、若い方は、両手でカップを挟み込むように持ち、猫背気味になって相手をうかがうように見上げていた。だが、その目は鋭くぎらついている。
「クルーヴァ、今お前が出て行っても話がこじれるだけだぞ。先方が主張する権利は教会が認めたものであり、あの領地を継ぐのはあの娘だ」
「だからといって、オレはこんなチャンスを指をくわえて見てらんねぇ。フリスト卿、あんたには散々世話になったがオレは行くぜ。行って、オレのモノを取り返してやる!」
「クルーヴァ、お前がそう思う気持ちも分からないでもない。だが、お前が手勢と共にあの土地を襲い、奪い取って、自分のものだと宣言しても教会はおそらく認めんぞ」
クルーヴァと呼ばれた方はその時はじめて、表情を緩め、こずる気な笑いを顔に浮かべる。
「卿、オレだってそれは判っている。オレにいい考えがあるんだ、いやあるのです」
老人は眉をぴくりと動かし、それから促すように顔を動かしてみせた。クルーヴァはそれに対して一瞬表情を硬くしたが、少しぎこちない笑みを浮かべながら話を続けた。
「オレは手下どもと一緒にフリスに向かう。そらぁもう、遠くの町でもそのことが伝わるくらい目立ちながらね」
「するとどうなると思う、いや思います?これ幸いと峠一帯を押さえようとしたカヴァーフの奴らが黙っちゃいませんよ。奴らは慌てて準備もそろわないまま乗り込んでくるに違いありません!そんな相手をオレが蹴散らしてやれば、オレは領地の救い主になるって寸法でさ」
「……だが、それでも娘が領主であることは変らんぞ。まさか、お前……!」
フリストの鋭い視線を受けながら、クルーヴァはニヤリと笑う。
「なにせ、戦ですから。……少なくとも、兄貴は寂しくなくなるんじゃないんですか」
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