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BBSメイル・ゲーム…プレイボード

16 ::2009/10/10(土) 23:43:44 ID:N4DXU2n20
第1回リアクション
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 夏の終わりと共に行われる聖人マーラークの“ロバ祭り”は、厳粛な感じはなく華やかで楽しげな雰囲気の中行われる。
ロバに扮した若者が目抜き通りを行進し、時折おどけて鳴き真似をしてみせては笑いを誘っていた。それ以外の場所でも、
祭りに集まった人を相手としてさまざまな催し物や出店が開かれている。
(さて、それでは私も始めるとしますか)
 街の中では比較的規模の小さい広場の一角で荷物を下ろし、マントの下で衣装を見栄えのするものに着替えて、準備を
整える。そんな自分に対して広場のあちこちから視線が向けられていることには気づいたが、もう慣れてしまった。ただ、
自分を見る目の中に、ハイエナが弱ったインパラを群れの中から探し出そうとしているのによく似た、気持ちのよくない
類のものが混じっているのには、いまだに馴染めない。思わず、心の中でため息が出る。
 気を取り直して改めて周りを見ると、そんなものとはまったく別の、純粋な好奇を宿した瞳がいくつも自分を見つめて
いるのに気づいた。笑って見せると、声をあげて喜んだ。やる気が戻ってくる。気合の声と共に、マントを放り投げるよ
うに脱ぎ捨て、
「それでは異国より訪れしイサの芸、とくとご覧あれ!」
口上を述べながら、最初のステップを踏み出した……。
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17 ::2009/10/10(土) 23:44:55 ID:N4DXU2n20
>>16
 フリストラル領の南端に位置する小村ペディアは、北の町ブランカへと抜ける白鬚峠に続く街道沿いにあるため、その
規模の割には人の往来が多く、いくつか宿も開かれていた。その内のひとつ『赤鱒亭』の食堂では、地元の住人が数名、
酒を片手に最近の出来事についての噂話に興じていた。マージュリーは自分の席に座り、ハーブをつま弾きながら、彼ら
の会話を聞くとはなしに聞いていた。
 彼らの話題は、行方不明となったフリストラル家の領主一行の件で、一人残されたミュティアなる娘は今後どうするの
か、この村を監督するセレベス老はどう動くのかといったもので、成人を迎えたばかりの女領主に対する不安と、それを
補佐する立場にある者に対する期待が、彼らの言葉の端々に込められていた。
(まぁ、ワタシとしては危なくなれば、道を下って行けばいいだけですけれど……)
 マージュリーはそう思いながら曲を弾き終えると、おざなりな拍手があがる。そして、誰かの近づく足音が聞こえ、何
かがそばのテーブルに置かれた音がする。
「……ほらよ」
 聞こえてきた声からするとこの宿の亭主で、置かれたのは匂いからすると麦酒の一種のようだ。
「ありがとうございます」好意に感謝して口を軽くつけて見せるが、あまり味のいいものではなかった。

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